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〇:一般小児診療 △:予防接種・専門外来
〒520-3031
滋賀県栗東市綣3丁目5-17
栗東よしおか小児科
TEL 077-596-3700
FAX 077-596-3701
はじめに:
気管支喘息は小児のアレルギー疾患で最も多くみられるものの一つです。頻度がとても多いので普通に小児科一般臨床に従事してきた小児科医ならば、多くの症例を経験しており、特にアレルギー専門医でなくても診療している医師がほとんどです。その辺りは神経疾患や循環器疾患などのように専門医でないと診断も治療も難しいというのと違っています。私もアレルギー専門医ではありませんが、ガイドラインに従いながら、診療させてもらっています。専門医でないと治療が難しいと思われる重症例は専門施設へ紹介することにしていますが、開院以来そういうことは1例を除きありません。
診断:
主な症状が咳嗽や呼吸困難なので、よく見られる風邪症状と見分けがつきにくいことがあります。原因は慢性的な炎症による気道粘膜のむくみのため気道が細くなり、ちょっとした刺激(年少児なら多くは感染、年長からはハウスダストや花粉、気圧の変化など)により発作が生じます。見たことがある方はわかると思いますが、重度の発作では頻繁な咳でしんどいというより息が出来なくなります。診断は聴診所見と経過(数か月の期間のことも)を総合して行います。血液検査ではアレルギーの傾向はわかりますが、喘息かどうかがわかることはありません。例えば喘息は無くてもアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎だけでも数値は上がります。呼吸検査をすることもありますが、年少児はやること自体が難しいし絶対的な検査ではありませんので、当院ではほとんど行っておりません。
治療:
もちろん発作時はそれを抑える治療を行いますが、大切なのはその後の症状(発作)を起こさない期間を作る予防治療です。重症度によりますが抗アレルギー薬と吸入ステロイド治療を軸に、症状が無くても継続してもらいます。短くても2~3ヵ月以上はかかります。吸入ステロイドは専用の補助具を用いて行いますので、開始時は看護師より丁寧にやり方を説明しますし、開始して最初の外来時には診察室で実際に吸入しているのを見せてもらって確認しています。
自宅で発作を起こした際のために、発作時用の吸入薬(メプチンエア®など)を処方したり吸入器を貸し出しているクリニックもありますが、当院では絶対に行いません。確かに発作時に吸入薬を使用することで軽快することが多いですが、患者さんがそれに頼って発作があっても受診しないことを繰り返して、そのうち吸入薬も効きが悪くなりどうしようもなくなって受診したときには、かなり重症化していることが本当に多いからです。上述の専門施設に紹介した重症例は自宅で一晩に何度もメプチン吸入(他院で処方)をして重度の呼吸困難となり受診されたお子さんで救急搬送となりました。当院では発作時のためにステロイド内服薬を出すことはありますが、基本的には夜間休日でも発作で眠れないくらいの呼吸困難時は救急受診するように説明しています。
発作が無い状態が一定期間経過すれば段階的に減薬して治療は終了です。終了後に発作が出ることもありますが、症状が軽かったり頻度が少なければ、その都度適切に発作時治療を繰り返すことで治まっていきます。
最後に:
今は良い薬が出来て治療ガイドラインも確立しているので、正しく治療を行えばほとんどは子どものうちに治癒しますが、治療をしないと慢性難治化して一生悩まされることになります。成人にもなると喘息発作は精神的ストレスなどでも起こしやすくなるので、大切なイベント(受験、結婚式、海外旅行などなど)のときに限って発作が起きることも少なくありません。また、いまだに重度の発作で命を落とすことも稀ではない疾患です。子どもの将来のためにも、適切に治療を行うようにしましょう。
(2025/3/2)